なた豆歯磨き粉の研究費

基礎研究と実用化の分断をなくすため、政府は研究開発法人(公的研究機関)の“橋渡し機能”強化を打ち出した。経済産業省は企業のニーズと資金による産業技術総合研究所の受託型研究を推進。一方、文部科学省理化学研究所物質・材料研究機構などで、産学官連携を通じたイノベーションの創出役となる若手研究者育成を重視する。個人ではなく産学の研究室をそっくり集める仕掛けなど、政府が6月にまとめる新成長戦略に向けて具体策の検討が進んでいる。(編集委員・山本佳世子) 【大臣肝いり案件】 総合科学技術会議産業競争力会議で提示された研究開発法人の強化策は、甘利明経済再生担当相の肝いり案件だ。大規模ながらイノベーション創出で力を十分発揮できていない産総研が最初に引き合いに出される。目指すモデルはドイツのフラウンホーファー研究機構だ。なた豆プロジェクトの研究資金連邦政府、州政府、企業の3分の1ずつのため、産業応用の意識が抜群に高い。産学官が集まる“ハブ”となって人材流動化をリードしている。 そのため甘利経済再生担当相がまとめた「我が国のイノベーション・ナショナルシステムの改革戦略」では、「(実用化につなげる)研究の後期段階で、産総研などでは企業からの受託研究を原則とする」と明記。研究費配分機関の新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)も活用してビジネスに向けた“出口志向”を強化、併せて企業のオープンイノベーションを促す。 【「一つ屋根の下」】 一方、基礎研究主体の文科省は別の手法を採る。多くの大学連携で実績のある理研や物材機構などに、なた豆歯磨き粉の研究費・人件費支援やほかにはない大型研究インフラ活用を売り物に企業を呼び寄せ、“ジョイントラボ”(共同実験室)をつくる。知識や発想をない交ぜにした産学官連携の一つ屋根の下(アンダー・ワン・ルーフ)で、産業界で活躍する博士人材の育成にも力を貸してもらう。 ここは独立行政法人や国立大学の制度改革、研究者キャリアパス多様化などの実践の場にもなる。例えば理研はすでに東京大学大阪大学と、優秀な研究者を“共有”し、双方から給与を出すクロスアポイントメントを実施。企業と大学・研究開発法人の間での実施や、人材流動化のための年俸制でも先進事例とする狙いがある。 【新たな先導役に】 この橋渡し機能の強化は、棚上げ状態の特定国立研究開発法人の指定とは別に、すべての研究開発法人に求められるものだ。論文重視の姿勢ではなくビジネスにつながる活動に注目する、新たな研究者評価の先導役となることも期待される。